沙耶の考えがわからず、何度目かわからないため息をもう一度つくと。
「―あ、紗夜華からメールが来てる」
甲斐はとうとう俺を無視し始め、スマホを手に。
「おい!」
なんか、本当にイラついて、そう叫べば。
「うるさいなぁ…………」
甲斐は面倒くさそうに俺を見、メールに視線を向け、固まった。
「…………甲斐?」
この鬼畜が固まるなんて、よっぽどのことである。
しかし、彼が今、触っているのはプライベート用の携帯だから、仕事関係での不備ではない。
紗夜華からメールが来てると、甲斐は言ったのだから……
「おい、紗夜華になんかあったのか?」
紗夜華は、身体が弱い。
ずっと、入退院を繰り返してきたほどである。
「いや、そういう訳じゃ……うん、でも……」
なんか、煮えきらない。
そんな返事をする甲斐は、電話してみる、と、部屋を出ていった。
鬼畜があんな様子なんて、珍しい。
もしかしたら、本当になにか、あったのか。
「……」
気になるが、今の俺にそれに気をかける余裕はなく。
「……ふぅ」
何の音もしない、部屋のなか。
漏れたため息だけが、静かに響く。
「……大事にしたい、だけなのに」
どうして、周囲の人間ができることを俺はできないんだろうか?
甲斐が出ていったせいで、余計に静かになった部屋の中で、相馬は項垂れた。


