「母さん」 「ん?」 「……ありがとう」 「フフッ、いきなり、どうしたの?」 「……何となく、言いたくなった」 「ええ?」 ありがとう……俺を生んでくれて。 生まないって選択肢を選ばず、俺を生んでくれて、この世で息をさせてくれて、立たせてくれて、ありがとう。 「変な息子。ま、親が変だから、仕方無いかー」 若々しい母さんはそう言うと、電話から帰ってきた父さんの方へと駆けていった。 俺も、それに続いて。