「はいっ!」
彼に微笑んだ。
すると、彼も笑って。
「またね」
お互いに手を振って、別れる。
「……兄さんのさ、あんな顔、初めて見たね」
すると、背後で、冬哉さんがそう呟いて。
「あのさ、伊織ちゃんは何歳?」
と、訊ねてきた。
「えっと……美耶と同い年で、17です」
「17……高校は?」
「姫宮先生の許可が下ったら、戻ります。その為にも、美耶が勉強を教えてくれてて」
「そう言えば、美耶は蒼繚華に来ないわけ?父さんと約束だったのに」
冬哉さんは、振り向く。
「父さんにお願いして、高校までは今のところで通うの。絋にも友達がいるしね、私の事情で振り回せない」
「絋は、父さんとの約束を守れって言わなかったのか?」
「言われたわよ?でも、私が嫌だって言ったの。ただの幼馴染みのために、そこまでする、義理はないと私が考えてさ。だから、高校までは。大学からは、蒼繚華よ」
美耶は、鈍い。
ほんとに、鈍い。
それは、出逢って少ししか経ってない私が言えるほどに、彼女は鈍かった。


