「ってかさ、母さんが兄さんのことを探してたんだけど。なんで、誰も伝えてあげないの」
「……忘れてた」
年のわりには大人びた少女は、兄姉を見遣り、ため息をつく。
「悠哉兄さん、父さんと母さんが探してたわ。恐らく、家のことだろうけど……」
「本当?分かった。行ってみるよ」
何か思い当たることでもあるのか、彼は頷くと、立ち上がった。
「伊織も、病室に戻った方がいいよね」
そうだ。
ここまで連れてきて貰ったんだから、私、一人では病室に帰れないんだ。
でも……
「ご両親が呼んでいるんでしょう?なら、早く、行ってきてください。私は、後でも構いませんから。場合によっては、裸足で戻ります」
彼の好意に、甘えることはできない。


