☆真実の“愛”―ただ、愛してる―3



「……伊織、漏れてる」


「へっ、」


肩を小突かれ、顔を上げる。


「ぜーんぶ、心の声、漏れてるよ」


「え!?心の中で、言ったつもりだったのに!」


笑いながら、そう教えられ、私の頬は熱くなる。


(恥ずかしい……)


何を口走ったのだろうか。


妄想を始めると、止まらなくなる癖、本当、どうにかしたいものである。


両頬を手で包んでいると、悠哉さんが、私の背後に回って。


「─赤くなったり、青くなったり、だらしない顔したり……やけに、百面相の女の子ね」


「うん。可愛いだろ?」


私の耳を塞いだ上で、スッゴい美人と会話を始めた。


「気に入ったの?」


「うん。気に入った」


何を言っているのか、さっぱり……


「兄さんが笑うのなら、その女の子は唯一かもね」


「どういう意味?俺だって、笑うときは笑うじゃん」


綺麗に、音が入る隙間すらも塞がれてしまい、本当になにも聞こえない。


否、聞こえはするけど、ぼんやりとしててわからない。


「それは、表情筋の問題だから。ま、母さんも大したことはなさそうだし……兄さんは、楽しそうだし。吃驚したわ。いきなり、母さんから連絡が来るんだもの」


「え、まさか、それで?」


「ええ。伊織を見てほしいって。……デート中、だったのに」


話の内容はさっぱりだが、スッゴい美人さんが怒っているのはわかる。


「そっか。ごめんね、ちづ、拓斗」


「本当にね」


「こら、ちづ。……謝らないでください。これでも、千鶴も喜んでますし」


「え、そうなの?」


「悠哉さんが、お相手を見つけられましたからね」


「本当、兄弟のなかで一番上なのに、一番遅いんだもの」


ちづさんはそう言うと、(何言ったかは、不明)恋人と思われる人の手を取って、去っていく。


去り際の姿さえ、とても綺麗で。