「美味しいですよ!すっごく!!」
「フフッ、ありがとう」
「お世辞じゃないですからね!」
「うん。知ってるよ」
なんて、羨ましい。
「……お菓子、食べながらで良いんだけどさ、これ、服の修正ってさ、こんな感じでも良い?」
「服?」
「伊織が母さんに預けたやつ」
彼はウエットティッシュで手を軽く拭くと、お菓子を取り出した袋と違う袋の中から、服を数枚、取り出した。
「破けてる部分とかは、刺繍で誤魔化しちゃったんだけど……こんな感じで良い?」
手渡された服。
私や、弟妹が着ていたもの。
「凄い……」
これもまた、感嘆の息を漏らさず得なかった。
「悠哉さん、手先が器用なんですね」
「僕は、ね。妹の茅耶は、超絶不器用だけど」
「そういえば、美耶が言ってました。『茅耶姉さんの器用さを全て奪ってきたかのように、兄さんは超絶器用』だって。茅耶さんと双子でしたよね?」
「うん。その台詞、色んな人に言われたよ。因みに、僕が先に生まれたんだ」
……穏やかな、時間が流れてく。
この時間は、とても心地よくて。
質問するままに、答えてくれる悠哉さん。
優しくされたら、また、辛い思いをするかもしれないのに。
美耶といるとき、沙耶さんといるときとは、違う。
感情が忙しなくて、変な感じ。


