「……伊織、もう良いよ」
……外にいた。
「あ、猫さん!」
顔をあげると、木の上にいたはずの猫が、他の仲間と微睡んでいて。
「猫は、木に登っても大丈夫だよ。ちゃんと、降りてくるしね。……あ、伊織、足が汚れちゃうから」
窓の棧を飛び越えられたんだから、もう良いだろうと思って、悠哉さんから離れようとすると、
「シート、敷くから」
と、止められてしまう。
と、言うか、靴がないから、足が汚れるから、私はこんなことを悠哉さんにしてもらっているんだった……。
自分のバカさ加減を自覚し、悲しくなってくる。
「伊織?百面相して、どうしたの?」
私の名前を普通に呼ぶ、悠哉さん。
私を軽々と、片手で抱えながら、シートを敷いた彼は、私をふわりとそこに下ろしてくれた。


