☆真実の“愛”―ただ、愛してる―3



ともかく、私は美耶のお兄さんのいう通りに、一階の応接室に向かった。


事故の時に履いていたサンダルは、家族の血で染められて。


現実を受け止めきれなかった私は、それを処分してしまった。


忘れたい、けど、忘れちゃいけない記憶。


人って、どうして、辛い記憶ほどよく覚えてて、よく、思い出してしまうのだろう。


どうせなら、幸せだった頃の記憶が良いのに。


―コンッ


「?……悠哉さん?」


私の考えを中断させるように聞こえた、窓を小突く音。


鍵を開ければ、彼が至近距離で微笑んだ。


「おいで、伊織」


おいで?


両手を伸ばされて、目をぱちくりとする。


「え、お、おいでって……」


「猫と遊ぶんでしょ?」


そういうことか。


待っててね、その一言が何を表していたのかを漸く悟り、私は恥ずかしさから、顔を覆った。


「伊織?」


イケメンは、ズルい。


何しても、格好よく見えてしまう。


『死んだ目をしてるのよ』


確かに、沙耶さんの言う通り、彼は常に目が死んでいる。


けど、今は。


この瞬間は、暖かさを感じる。


自分に向けられた、その無表情に。