「本当、あの人は……」
自分もかなりのマイペースだと自覚しているが、母親も相当だ。
何て、思いながら、伊織の病室のドアに手をかけようとすると。
「……っ、猫さん!」
と、部屋の中から、人間……いや、伊織が。
「って、うわっ、ぷ……」
俺の存在……否、僕の存在に気づいたけれど、止まれなかったらしい伊織はそのまま、突っ込んできて。
「ご、ごめんなさい!」
慌てた様子で、顔を上げた。
「でも、猫さんが……」
「猫?一体、どうし…………ああ」
病室の中を覗き込むと、大きな窓が目に入り、目を凝らすと、木の上に登って降りられなくなったらしい猫が目に入った。
「助けに行くの?」
「そりゃあ、猫さん降りられなさそうですし……」
「猫は自力で降りられるんだけど……」
猫の心配をしている伊織はかわいくて。
さっき、真っ赤だったはずの顔に『心配』と書いてあるように見えた。


