「めんどくさい夫婦!」


と、バッサリとお言いになられた。


「つまり、“儀式”を受けなければ、御前家の皆様は沙耶を正妻として認めないといっているんでしょう?だから、沙耶は受けても良いよと言った。でも、それを相馬が拒絶。ちょっとしたすれ違いで、家出……」


そして、柚香様は大きなため息をつき、


「ある程度の事情はわかったわ。ありがとう、蝶佳さん」


綺麗な所作で、頭を下げてくる。


「悠哉と茅耶を連れてきて貰える?今は、沙耶の言う通りにしておくから。沙耶、頭に血が昇るとダメな子なんだよね。だから、何言っても、今は無駄だろうし。とりあえず、悠哉と茅耶は連れてくわ」


「すいません。夫婦喧嘩に巻き込みまして……」


「私をほどよい面倒くさいところで巻き込むのは、沙耶の癖みたいなものよ。でも、代わりに私も沙耶を頼りきってるし……お互い様だと思ってる。何より、私を頼ってくれたから。それでいいや」


柚香様は、お笑いになる。


親友のことを迷惑など言わず、嬉しそうに笑う。


それだけ、沙耶さまのことを大事になさっている。


こんな友人、私も信じることが出来たなら。


大事だった唯一無二の親友を……和子を、失わずにすんだのだろうか?