☆真実の“愛”―ただ、愛してる―3



「お帰りなさい、伊織」


優しく微笑んでくれる、母。


「学校はどうだったかい?」


編み物をする、祖母。


「お姉ちゃん、お帰り!」


可愛い、双子の弟妹。


夜になれば、帰ってくる父親に、私の毎日は本当に幸せに満ち溢れていた。


「明日は、お出掛けしようね」


この幸せが、突然に壊れてしまうこともあるということを、私は知らなかったんだ。


―否、知ってはいた。


物語上では、よくあることだった。


絶望する主人公のもとに、運命の相手が現れて、ハッピーエンド。


それが、当たり前で。


私はそんな物語が好きだったけど、自分の身の上に当てはめたことはなくて。