「あ。ごめーん……忘れてた」
因みに、私がわざわざ看護師さんを呼んで、伊織のところに来たのは、『一人で行動するな』という、相馬くんからのご命令のゆえなのであった。
「忘れてたって……」
「娘に無視されてさ。伊織に届け物をしに来たんだけど……あ、相馬」
使えない左手の代わりに、右手で悠哉に持ってきて貰ったものを持っていると、遠くから、相馬が歩いてくるのが見えた。
「おーい」
プライベートのところなので、大きな声を出しても問題はなく。
私を見つけた相馬は、早足で私に近づいてくると、私から荷物を奪った。
「ちょっと」
「ちょっと、じゃねーよ。怪我は?」
「全然。ピンピン。元気、いっぱい」
「……本当だろうな?」
「なんで、そんなに疑り深いのさ」
私の旦那様こと相馬は、今年で44歳。
20代の頃よりは、貫禄に溢れているけど……
「あんた、不老よね」
皮肉も加わっているが、本当にそう思う。


