「昔ですね、女好きの当主がいて。あちこちに愛人を作りまくるもんだから、子供がたくさんできたんです」


持ってきた荷物のなかから、家系図を取りだし、広げる。


「えーっと、相馬さまが現在、321代目の当主ですから……あ、この人です。この127代目の当主です」


「あー、えーと、はい」


「この人の子息は見てわかるように、たくさんいました」


柚香様の目は家系図をたどり、127代目の子供もすべて記されているところを見つけると、心底、嫌そうな顔をした。


「多っ!」


「……でしょう?私も、最初、すごく嫌な気持ちになりましたわ。浮気者だったんですよ。だから、子供があちこちに増え……結局、36人……」


「よく、認知できましたね……」


「そこは、この家の力ということで。と、いうか、この人がいたせいで、子供がどんどん増えていったんですよ」


「いや、まぁ……そうでしょうね」


柚香様もわかるのか、納得したようにうなずく。


子供がまた、子供をつくったら……一人、一人が一人ずつ子供を作ってしまったら、それだけで、36人。


恐ろしい数である。


「そのせいで増えきった御園の人間は、改名して、裏に下りました」


「裏?下る?」


私も初めて知ったときは、ただ、戸惑った。


柚香様も戸惑われるかもしれない……


「この家の初代、御園潤子さまの元の名前は、御前です」


増えすぎたせいで、作られた家二つ。