☆真実の“愛”―ただ、愛してる―3



どのくらいの時間が経っただろうか。


ふと、伊織が顔をあげて、息をついた。


「一章節、書き終わった~」


原稿用紙、総数50枚ほど。


これを書き上げた伊織の腕はすごいな、毎度のことながら。


「一章節ってことは、まだ、あるの?」


「あ、はい。四章節で、完結予定です」


「まだ、道のりは長いわね……パソコンとか、本当に要らないの?」


「そこまで、ご厚意に甘えるなんてできませんよ。遺品の整理や、色んなことを手伝ってもらったんだから……」



伊織は、六人家族の長女だった。


お祖母さんと両親と、二人の弟妹。


とても、幸せな一家だったのに。


彼女は、一人、置いて逝かれた。


「もうすぐ、一年ですね……」


それが、私と出逢ってからなのか、家族を喪ってからなのか、私にはわからなかった。


「そうね……」


とりあえず、頷いていると。