☆真実の“愛”―ただ、愛してる―3



穏やかな時間が流れる。


鳥のさえずり、緑の揺れる音。


まるで、家にいるような気分になるほどに静かな、部屋。


「……ねぇ、伊織」


「はい?」


「今度は、どんなお話を書いてるの?」


「恋愛小説です」


伊織の趣味は、物語を書くこと……創作だ。


絵もうまく、自分で考えたキャラクターで話を仕上げる彼女の物語は、面白い。


「イケメンに会ったって言ったでしょう?美少女とか、イケメンとか、私に描く腕はないけれど……物語は、書けるから」


あんなことがなければ、今、高校生活を楽しんでいただろう伊織は、今日もペンを動かす。


まるで、現実から逃げるように。


「そう、出来上がったら、読ませてね?」


「はい、是非」


それからはまた、無言で。


伊織はペンを進め、私は本を開く。


これが、私と伊織のいつもの風景。