「沙耶さんも出来る方でしょう。……歩けますか?」
「ん。ありがとう。……そうかな?できないことも多いと思うけど」
「フフッ、御自分で思っているより、出来る御方ですよ?あなたも、困ったことなんて無いでしょう?」
看護師さんの手を借りながら、姫宮のプライベートの空間に向かう。
この病院の経営者は、姫宮家だ。
で、あるから、私が入院しているこの階は名家専用の階であり、それぞれ、御園、焔棠、姫宮……と、プライベートの場所がある仕組みだ。
伊織は、そんな姫宮のプライベートのところで入院している。
それは、夏翠の配慮であり、伊織の弱さでもあった。
『助けて……私も、いきたい……』
私にしがみついて、そう泣いたあの子を放っておけないのは、自分に似ていると思ってしまったからだろうか。
私は相馬によって、今を生きているけれど……あの子は、どうなるのだろう。


