「でも、毎回思うけど、勿体無いわね、この才能。料理人か、デザイナー……本当、そんなのにならない?」
「やだ。責任とか、めんどい」
「……御園の跡継ぎの癖に?」
「俺、裏に行くもん。表は、冬馬くんに任せたー」
「……冬馬はそれで納得してるの?」
「なんだかんだ言って、父さんに似ているのも、御園の血が強いのも、冬馬でしょ。父さんやおじさんたちのようにしようと思って」
御園の総帥……即ち、僕の父さんである御園相馬がついている地位だが、そこは何十万、何百万、何億にいくかもしれない。そんな人の上に、父は立ってる。
僕はそんなことになるのだけは、御免だ。
面倒くさいし。
それに……
「昔から、父さんの仕事に一番、興味を持ってて、いつか、自分もやりたいと願っていたのは冬馬だったし。天の邪鬼だから分かりにくいけど……ずっと、勉強を頑張っていたのだって知ってる。長男のやる気のない僕が継ぐより、そっちの方が良いからね。冬馬にも、父さんにも、話は通してるよ」
四歳年下の、冬馬。
もうすぐ、二十歳となる。


