☆真実の“愛”―ただ、愛してる―3



「それに、それらは私の服じゃないのよ」


「ええ?……適当に手直ししちゃったんだけど」


「ああ、それは、本人から許可はもらってるから。この病院にね、ある女の子がいてね、その子は家族全員を交通事故で失って……自分だけが生き残ってしまってさ、せめて、家族の形見であるものを、家族が買ってくれたものを、手元に残しておきたいって言うから……あんたに頼んだ始末です」


形見。


言われてみれば、サイズが小さいのがいくつかあった。


「俺なんかが、直して良かった?」


「ええ。私の息子に頼むわね、って言ってるから」


「そう。なら、良いけど」


母さんの年のことを考えて、控えめにした花の刺繍。


まさか、他人のとは。


しかも、黙って持たされるものだから、他人のものとは夢に思わなかった。


相変わらず、この母親は適当、雑な人である。


「に、しても……相変わらず、すごい腕よねぇ。我が息子ながら、自慢だわ」


「……母さんだって、やろうと思えばできるでしょ?」


服を手に、そういった母さん。


この人は、漫画のように何でも出来る人だと兄弟全員で認知している。


「やろうと思えば、ね。でも、ここまで精密なのは、流石に出来ないわよ。じっとしているの、大嫌いだから」


ニッコリと、言った母さん。


確かに、体が不自由といえど、動かしている時間の方が長そうだ。