「……それで、すむ?」
「どーだろ。多分?」
「多分じゃ、意味ないよ。…………でも、もう、なに言っても無駄か。なら、どーでも良いや、面倒くさいし」
用意された椅子に腰を下ろし、紙袋を渡す。
「おぉ!頼んだやつ?早いね!」
「朝から、緊急!って、題でメールが来るから、何かと思えば……」
紙袋から取り出されるのは、タッパ。
中に入っているのは、
「んー、美味しそう!」
勿論、料理だ。
「母さんの好物を適当に作ってきたけど……これで良いの?」
「全然良い!ありがとう!」
「……飾り切りした果物も入ってるから」
「ゆーや、最高!」
ヤバイ、母親に見えなくなってきた。
「…………母さんが直せないっているから、破れてた服も縫ってきたよ。でもさ、よくよく考えたら、買い直せばよくない?」
別の袋から、数枚の服を取りだす。
「買い直すなんて。勿体無いじゃない?」
ニコニコと料理を眺めながら、笑う母さんはそう言って。
「無駄な資源は出さない主義なの。だから、捨てないし、買い直さない。いくら、金があっても、話は違うしね」
「『金持っている人間が金を使わないと、経済は回らない』……そう言ってたの、誰だっけ?」
「使えるところでは、使ってるわよ。御園の金も、黒橋の金も」
決して、お金に固執しない母さんは、服にも、化粧品にも、身の回りのものにも、固執しないタイプだ。
欲しい本があったら、古本屋行く元お嬢様である。


