やはり、どこか、ネジのぶっとんでいる母さんは頬を膨らませ、最大級の権力を使った。
確かに、御園の伝承の力は“治癒”だ。
女の人にしか受け継がれないものだが、それならば、茅耶を始めとした四人の妹は全員、母さんの怪我を治せるということで。
この力を持つものは自分の怪我は治せないものだが、他人の怪我は治し放題。
母さんは夫を始めとした、娘たちがその力の持ち主だから、治され放題。
……いや、自然治癒で良いと主張する母さんを押さえ込んで、周囲が無理矢理、治す方が正しいかもしれない。
母さんは、自分のことにはズボラだから。
父さんが女性限定伝承ものの“治癒”を持っていることは、内密で。
なんか、特別な事情があるらしいけど、詳しくは知らない。
鬼とかが存在する世の中だ。
父さんの幼馴染みたちが、父さんのような力を持っているのも理由があるんだろう。
でも、基本的に、そこを検索するとかの意欲は持ち合わせていない。
(……面倒だし)
こういうことへの探求心なんて、持っている人間が我が兄弟にいるだろうか。