「あ、ゆーや!」
ニコニコとお菓子を頬張りながら、笑うのは自分の母親……のはず。
「モグモグ、……どうしたの?」
「どうしたの?、じゃないでしょ。何やってんの」
若さが衰えることのない母親は、用意してあったお茶を一口飲んで。
「いやー、美耶と買い物してたらさ、襲われて。久し振りすぎて、ビビったよ」
と、能天気に笑う。
美耶というのは、悠哉の妹だ。
悠哉の下には、茅耶を含め、四人の妹と二人の弟がいる。
茅耶が一番目なら、美耶は二番目の妹だ。
「で、鉄パイプを素手で受け止めたって?」
「うん、さすがに骨折れた」
母親の左腕は、包帯ぐるぐるで。
「当たり前だよ……相手は殺す気で向かってくるんだから。蹴りの一つでもしてやれば良かったのに」
ニコニコ笑う母さんは、こう見えて強い。
幼い頃から護身術とは呼べないくらいの喧嘩の方法を習ってきた母さんは、雑魚なんて一発のはずなのに。
「いや、美耶がいたからね?それに、相馬の誕生日プレゼントも持ってたし」
「この際、そんなものはどーでも良いでしょ。父さんは?」
「バリバリ、怒られた」
父さんのことを出した瞬間、チッと、舌打ちをした母さんは。
「大体、怒らなくても良くない!?ちょっと、骨折して、打撲して、痣ができただけなのに!」
「それ、ちょっとって、言わないでしょ……」
冷静に突っ込むと、
「ちょっとだよ!大体、御園の力でどーにでもなるじゃん!」
と、返してくる。