「今からは……俺だけを見ていれば良い」


そういえば、狼狽える沙耶。


「~~~っっ、せめてっ、部屋の中が良い……」


「じゃあ、行こうか」


沙耶を妻にしても、守り抜くことが出来ると、どこか自負していたのかもしれない。


でも、俺の身分では、それは不可能に近くて。


なら。


「愛してるよ」


そう微笑めば、


「私も……」


恥ずかしげに、沙耶が応える。


伝えられるだけ、伝えていこう。


あの後悔を、二度としたくないから。


沙耶は呼べば、振り返ってくれるから。


抱き締めて、くれるから。


(……もう、大丈夫)


人を愛することで、過去に終止符を打つ。


俺の中の母さんが、思い出になった瞬間だった。