■相馬side□




感じるのは、苛立ちか。


それとも、自分の不甲斐なさか。


沙耶を抱え、甲斐から渡された鍵を片手に、俺は庭へ行き。


「相馬さま、どうなされました?」


「ちょっと、出掛けてくる。一週間くらい、帰らねぇから」


「……それは、ちょっとではないんじゃ……?―まぁ、良いです。わかりました。車を出しますか?」


「ああ。俺が運転する」


「かしこまりました」


礼を取り、すぐに準備にかかってくれる彼は、働き者で。


沙耶の無茶ぶりにも、付き合ってくれるやつだった。


「用意できました。……相馬さま、使用人の身分で言うのもなんですが、沙耶さまがまた、お食事を三日くらいとられていませんので……そこのところをどうか……」


沙耶を見張っていた彼がそう言うと、黙っていた沙耶が腕の中で、肩を震わせた。


「―わかった。ありがとう、和貴」


「いえ、何かございましたら、お呼びつけください。そこは、立ち入り禁止にいたしますんで、電話で」


「ああ」


双子の面倒とか、沙耶の運転手とか、色んなものを務めている和貴は、ニッコリと微笑む。


機転の利く、とても良い男である。