「どんなに苦しくても、明るく振る舞ってた。そんな私に手を差し出して、甘えさせてくれたのが陽向だった。……沙耶だって、そうでしょう?本当は、離婚なんてしたくないでしょう?相馬のためとか言いながら、嫌で、嫌で、堪らないでしょう?」


莉華伯母さんの指摘で、沙耶の肩が跳ね上がる。


「沙耶がいなくなったら、相馬は他の人と結婚するのよ?それこそ、沙耶の言う、相馬の好きな人かもね?」


その様子を見て、嬉しそうな莉華伯母さんはついでに楽しそうに沙耶に微笑みかけて、


「相馬のためとか、方便はどうでも良いのよ。貴女は、どうしたい?」


沙耶に、選択権を与えて。


「……相馬を、苦しめる存在になりたくないんです……相馬が甘えさせてくれるぶんも、甘えさせてあげたい。好き、なんです。初めて、好きになった相手なんです。生きていることを、許してくれた相手なんです。離れたくない、ずっと、一緒にいたい。でも、私は、相馬の気持ちを無視してまで、相馬の優しさに甘えることは……」


「だってさ、相馬」


莉華伯母さんは沙耶の言葉にコメントすることなく、沙耶の背後から、部屋の中を覗いていた相馬にバトンタッチした。


そして、沙耶がすごい、勢いで振り向く。


あーあ、離婚届がグシャグシャ。


そして、相馬はお怒りMAX。


(……知ーらない)


相馬が怒ることなんて、あまりない。


だから、何も言えないが。


「会議を早めに切り上げて、沙耶の様子を見に来たら、また、沙耶は家出をしようとしていました。しかも、永久の。チャンチャン」


横では、甲斐がふざけていて。