「何度も、謝ったわ。『生んであげられなくて、ごめんなさい』『子供を産めなくて、ごめんなさい』……何度も、何度も。そう、心が壊れても」


莉華伯母さんは子供が大好きな人で、陽向伯父さんとの子供を深く望んでいた。


けれど、その望みは断ち切られ、長いこと妊娠するために続けていた治療もすべて、無駄となり……とうとう、彼女は壊れたのだと言う。


「『離婚してください』……今の沙耶とは、違う理由で陽向にお願いした。
でも、そしたらね、この人ったら、
『莉華をこの家から追い出すって言うのなら、俺も出ていく。御園の名も、権力も、何もかも要らない。そもそも、身体の弱い莉華と付き合っていたところに飛び込んできたのが、“御園”という家だ。これぐらいのこと、一生、幸せにすると誓ったあの日に覚悟はしている。家のせいで愛した女を手放したくない、愛した女を守るためなら、家なんて要らない』
……ボロボロだった心に、光が差し込んだ気がした。
正直、陽向と別れたら、死のうと思ってたの。
私の両親は、弟たちは……事故で、死んじゃってたから。そんなときに助けてくれたのも、陽向でね?」


愛しさを含めた、莉華伯母さんの瞳。


この二人は、結局、離婚はすることなく。


「陽向の言葉を聞いた、相馬のおじいさん……陽介さんが、御前家を脅してまで、私をここに置いてくれたのよ」


今だって、二人で幸せに暮らしている。