「契約の間、相馬は私を好きになってくれました。そうして、二人は幸せになりました……チャンチャン、なんて。それはすべて、“お姫様”の役目でしょう?」


「……」


「相馬には私じゃなくて、もっと別に好きな人がいたのかなって、私を元気にするために、私を抱いて……茅耶達を授かって、その罪悪感で私を妻にしていたとしたら?そう考えれば、全ての辻褄が合うでしょう?」


検討違いのことばかり。


沙耶には、愛の言葉なんて慰めにもならなくて。


「ねぇ、沙耶」


ふと、莉華伯母さんが沙耶にそう声かけた。


沙耶は、真っ赤な目で。


「あらあら、美人が台無し」


莉華伯母さんは沙耶に歩み寄ると、そっと、沙耶の目元に触れて、笑う。


「あのね?」


ゆっくり、ゆっくり、と。


闇に慣れていった人は、新しく、愛されたものを引き込んで。


「私、子供がいないんだけど」


「……え?」


初耳と言うように、沙耶が驚く。


すると、莉華伯母さんは笑って。


「私だってね、妊娠したことはあるよ?でも、流産しちゃったの」


何度も、何度も、流産したらしい、莉華伯母さんが子供を授かることはなく。


「結局、病気で子宮を取り出す羽目になってね?子供を残さなければ、御園家では生きていけない。何故なら、御前家の皆が反対するから。反対する人がいるなかで、無理矢理にでも、私を妻にすれば……大きな家なんだもん、どうなるか、わかるよね?」


沙耶は、バカではない。


聡い、娘だ。


ゆっくりと頷いた沙耶の頭を撫で、莉華伯母さんは続ける。