「……ええ加減にしいや?」
静かに、蒼い炎が燃え上がっていて。
肌にピリピリと来る殺気は、変わらず、強い。
「じゃあ、見せしめに一人目、いっきまーす」
沙耶のその行動を、勇真兄は止めることなく。
私たちも、誰も、止めなかった。
ついてきていた暴走族の幹部たちは、何人か、目をそらしていたけれど……相馬は、その光景をじっと見ていて。
沙耶が引き金に力を入れた瞬間、沙耶が捕らえていた男は気絶し、見て見ぬふりをしていた男たちの数人も、同時に気絶する。
「あーあ、お漏らししている人もいるー」
撃つってのは、沙耶にとっては冗談。
だから、引き金を引いても、弾は出てこず。
だって、沙耶たち家族の持つ、銃は一弾目は入れないようにと健斗さんに教えられ、沙耶たちもそうしているはずだから。
だから、誰も止めなかった。
それを、知っているからこそ。
「あ、でも、今のは温情だから。二弾目からは、入ってるからねー?」
沙耶は天井に銃口を向け、引き金を引く。
パン……ッ!
言葉通り、銃弾は銃口から飛び出してきて。
男たちは、涙目である。
こういう人間は徹底的に追い詰める……昔から、健斗さんがしている方法だった。
何故、健斗さんも沙耶もこういう人間を殺すほどに嫌うのかと言うと、健斗さんの最愛であり、沙耶の母親であるユイラさんがこういう人間に踏みにじられ、自殺寸前まで追い込まれた過去があり、今ですらも、男の人が苦手で、ちょっとしたことで発作を起こしてしまうような人になってしまったからだ。
何十年たっても、消えない傷。
大切な人間がそれを背負っているからこそ、彼等はその類の人間を許さない。
沙耶は笑ったまま、それを、懐にしまい。


