「全員、立て」
沙耶の冷ややかな、命令。
俺は柚香たちが出ていったのを確認次第、沙耶の元に駆け寄った。
「沙耶!」
「……なに?」
ガチギレした沙耶は、冷ややかな目で俺を見て。
「暴れても構わないから、ちょっと、縛らせろ。止血だ」
「……わかった」
一瞬、拒否しようとした沙耶は俺の顔を見ると、いつもの柔らかな表情に一瞬だけ戻り、手を差し出してきた。
沙耶の頬の血を拭き取るが、頬はたいした傷ではなく、三日から五日の時間があれば、治るであろうと思われた。
肩には持っていた布で軽い止血をし、俺は沙耶から離れ、拳銃を構え直す。
今の間に囲まれた俺たちは、四面楚歌の状態だったが。
「勇兄、背後を任せた」
「おう」
俺達には、たいした状況ではない。
これくらい……
「俺にも、かかってこーい」
どうってことない。


