「ふふ、可愛くなーい」
と、俺のもとから離れ、身体の色んな場所から血を流したまま、男に近づく。
「大人しくしてれば、薫や相馬に掛け合ってあげたのに」
沙耶は、解っているのだろう。
自分をさらうのを命じたやつは、他の人間だと。
そして、この人身売買を行っているのは、中岡組をはじめとした問題の奴等だが、その奴等に自分の後始末を頼んだ人間がいることに気がついている。
そして、相馬はそこまで、調べをつけている。
沙耶の素晴らしいまでの洞察力と、相馬の状況把握ぶりは、頭が下がる。
スッと、温度を失った細められた目。
ガツッ……!!
そして、何の躊躇いもなく、沙耶の足は男の頬に沈む。
……肩から流れ落ちる血は、男の頬を汚し、沙耶は笑みを深めた。


