「いつも感情を表に出さないで余裕な顔して笑ってるリョウなのに、
あんな本気な顔、初めて見た。
その顔見て、もうあたしには少しも希望がないんだってわかった」

少しくやしそうに彼女は唇をかんで笑った。
煙草を深く吸い込むとため息と一緒に白い煙を吐き出して

「あんたも、好きなんでしょう?」

と、あたしの事を見た。


「え!?」
「リョウの事、好きなんでしょう?」

動揺するあたしをまっすぐにみつめて彼女が言った。

「リョウの事が好きで好きで仕方ないって顔に書いてある」
「ええっ!」

思わず両手で頬を覆ったあたしを彼女は意地悪に鼻で笑う。

「仕方ないよ。だって、あんな男がそばにいて惚れるなって方が無理じゃん」

そう言って笑う彼女はきっとまだリョウくんの事が好きなんだ。
なんとなく、そう思った。

「あたしは後悔してない」

彼女は静かにそう言うともうすっかりぬるくなったコーヒーを飲みほした。

「リョウと付き合ってすごく苦しかったしすごいいっぱい泣いたし正直リョウを恨んだけど、
でも、今思い返したらあんなに好きな男と付き合えた事
後悔してない」