「?」

なんで? リョウくんのせいで?
意味が分からず首をかしげる。

「こっちは必死に勉強してるのに、遅刻はするし休んでばっかだし、授業中も寝てるの見てると徹夜で勉強してんのがバカバカしくなる」

みゆきちゃんは手にしていた参考書を閉じて眉をひそめて言った。

「なんか、卒業したら知り合いの店で働くらしいよね」
「受験関係ない奴はいいよなー」

そっか。
リョウくんも受験しないんだ。

そりゃそうか。
今働いてるって言ってたバーでそのまま働くのかなぁ。

「そういえば西野、最近いっつも腕にシュシュつけてるよね!」

みゆきちゃんのその言葉にびくりと身体が震えた。

「ああ! 地味に気になってた。前はキスマークいっつもつけてたのに最近ついてないなぁと思ったら今度はシュシュだもんね」
「絶対前と違う女だよね」
「でも意外じゃない? 彼女の物を身に着けるとか、あいつのキャラっぽくないのに」
「うん、意外ー! 実はちょっと見直したかも。雰囲気変わったよね、他の女と遊んでるとか噂も最近聞かないし」

そんな噂を楽しげにするみんなの声を聴きながらあたしは目を伏せて
飲みかけのココアの缶を指でなぞった。