男らしい長い腕には似つかわしくない
柔らかい素材でできた茶色いシュシュが彼の左手首にはまっていた。

明らかに彼のものではないそのシンプルなシュシュに
ずきん、と大きく身体が震えるくらい心臓が痛んだ。

あたしは保健室を出ていくリョウくんの後姿を涙をこらえながら見送っていた。

閉じる保健室のドア。
遠ざかる彼の足音。


ねぇ、リョウくん
好きだよ、リョウくん。

遠くなる後姿に向かってそう言って泣いたら
あなたはどんな顔をしただろう。



あたしはひとりきりの保健室の中で声を殺して泣いた。

生々しくよみがえるリョウくんの唇の感触。
鼓膜を震わす彼の吐息。
強引に自由を奪い肌をすべる長くきれいな指。


ああやって優しく髪をなでて
唇を重ねて
大切に彼に抱きしめられるているに違いない顔も見たこともない女の人に
激しく嫉妬した。

彼に愛される女の人に
心から嫉妬した。