「上田さん!」

お昼休み、ジュースを買いにいこうかなとカバンの中のお財布を探していると、木暮くんに声をかけられた。

「木暮くん、どうしたの?」
「あのさぁ、さっきの授業のノートかしてもらってもいい?」
「別にいいけど……」

いつも真面目な木暮くんがノート貸してなんてめずらしいなぁと思いつつ、机の中からノートを出して差し出す。

「上田さんって字綺麗だね」

木暮くんは私のノートを受け取ると、パラパラとめくりながら嬉しそうに笑った。


「別に綺麗じゃないよ、普通だよ。木暮くんがノート取り忘れるなんて珍しいね」
「今日あったかいからつい授業中眠くなっちゃってさ」

彼を見上げて首を傾げると、木暮くんはメガネの奥の目を細めて恥ずかしそうに首をすくめる。

「あれ?いたずら書きしてる」

私のノートの端になにか見つけたのか、木暮くんが手を止めて不思議そうな声を上げた。


いたずら書き……?

「あ!! ちょっと待って!!!」

あたしは慌てて木暮くんの手の中から自分のノートを取り返した。