「えっ! あたし!?」

突然出されたあたしの名前にびっくりして飛び上がった。

大人っぽくて綺麗な先生の彼女と
子供っぽくて童顔なあたし
全然似てないのに!

「いや、顔が似てるとかじゃないんだけど、なんとなく……」

優しく目を細めながらそう言った先生は、言葉を区切りちらりと腕時計を見る。

「ちょっと、無駄話しすぎたな。授業はじめるぞ」

真面目な顔に戻った先生に、

えー?

なんて不満の声が教室中から上がる。


「じゃあ、上田。205ページから読んで訳せ」

みんなの不満の声を無視して、先生は教科書を開きながら涼しい顔であたしを指名した。

「えぇー」

困った声を出しながら、あわてて教科書のページをめくる。

「みんなに余計な事を言って授業を妨害した罰だ」

そんなあたしを見て先生は怒ったふりをしてみせるけど、その視線は優しく笑っていた。