「あ! 西野がモテてる」

あたしの隣で外を眺めていたみゆきちゃんが前庭を指さして大声で言った。

「え?」

リョウくんが?
慌ててみゆきちゃんの指の先を見ると
2年生らしき女の子が数人リョウくんにかけよってるところだった。

「うわー、ボタンでももらいに行ったのかな。すごい勇気あるねあの子たち」

遠くからでも女の子に囲まれたリョウくんが面倒くさそうにあしらう様子がわかる。

「西野すげー迷惑そう。ああいう集団嫌いそうだもんねー」

めげずに話しかける女の子たちにみゆきちゃんが苦笑する。

「やっぱりリョウくんはモテるんだね……」

遠くからリョウくんを眺めながら
こうやって彼を見ることももうなくなっちゃうんだなぁ。
と、ぼんやりと思う。


やっぱりさみしいな
と思ってしまうあたしは本当にあきらめが悪いバカだと思う。

「実花、なにボーっとしてんの。
西野あのまま帰っちゃうんじゃない?」

窓枠に頬杖をつくあたしの頭をみゆきちゃんが叩いた。

「なんか言っとく事ないの?
ちゃんと話せるのこれで最後かもしれないんだよ!」