それで、少しでもリョウくんの気がまぎれるのなら
ひと時でもその孤独を癒せるのなら
わたしにできる事ならなんでもしてあげたい……
彼の長い指があたしの後頭部を乱暴に引き寄せた。
まっすぐにあたしの事を見つめる真っ黒な瞳。
「リョウ……」
その瞳に映ってるのはきっとあたしの姿じゃない。
彼が心の奥で求めてるのはあたしなんかじゃない。
……そんなのわかってる。
「リョウ……」
そうわかっていながらわざと彼の名前を耳元で囁く。
リョウくんの黒い瞳が苦しみで微かに揺れた。
彼女と同じ声で彼の名前を囁くあたしの唇を長い指がゆっくりとなでる。
その躊躇いの仕草までひどく艶っぽくて見ているだけでぞくぞくする。
「その声で、そんな風に名前呼ばれたら、勘違いしそうになる……」
苦しそうに顔を歪めあたしを見下ろして微笑むリョウくんが
愛おしくて仕方ない
「由佳さんの代わりでもいいから……」
掠れた声でそうつぶやいたあたしに
「……バカな女」
リョウくんは目を伏せて唇を歪めた。


