手紙の続きはこうだった。

『不妊治療をしたことを覚えていますか?
 本当は受精に成功したものが何個かありました。

 でも僕は思った。とても不安だった。
 調べれば調べるほど高齢出産のリスクがあることが。

 だから1人で結果を聞きに行きました。
 そこで聞いた嬉しいはずの受精成功も喜べなかった。

 僕は自分の子どもが出来る最後のチャンスです。
 もちろんそれは他ならぬ友恵さんとの子どもじゃなくてはダメだ。

 でもそれよりも何よりも僕には友恵さんが全てだった。

 失いたくない。

 友恵さんと引き換えに子どもを得たとしても何も嬉しくない。
 そんな事が起こったら子どもを憎んでしまいそうだった。

 化学流産をしてとても悲しんでいた友恵さんに体外受精がダメだったと嘘を教えた僕はひどい奴だ。
 直接は言わなかったけど、友恵さんが勘違いして良かったと訂正しなかった。

 それでも僕は迷っていて受精が成功したものは凍結保存してありました。

 そしてこのことを舞に相談しました。
 友恵さんを失うのが怖いと正直に。

 そこで舞に提案された言葉に甘えてしまった。
 それが良かったのかは分かりません。
 しかしそのお陰で僕の夢は全て叶いました。

 舞が代理出産してくれたのです。
 舞の2人目の孫が本当は僕たちの子です。

 僕たちの名前から文字を取って分からないように工夫もして真琴と名付けてくれました。
 舞の『ま』浩一の『こ』友恵の『と』です。

 それでも産まれた真琴は舞や秀、他の孫たちと変わらずに可愛かった。
 僕たちの子どもだけど、やっぱり舞のところの孫だ。
 でもそれで良かったと思っています。

 なぜなら僕にはやっぱり友恵さんが僕の全てだから。


 諦めていた男としての喜びをくれた友恵さん。
 諦めていた恋をさせてくれた友恵さん。
 愛し合うぬくもりをくれた友恵さん。

 僕の幸せの全ては友恵さんでした。

 ありがとう。
 僕を愛してくれて。
 友恵さんを愛しています。
 ずっとずっと。天国に逝っても。

 だから僕がいなくなっても幸せになって。
 天国で待っているから。敬具
           
 桜川浩一』