目を開けるとそこは自分の家だった。
側には浩一さんがいた。
ベッドのすぐ側に腰を下ろして顔を覗き込んでいる。
「私………。」
夢でも見ていたのか。
それにしては腕が痛い。
その腕には注射をしたような痕があった。
「気が付きましたね。
僕は…………友恵さんが居なくなったらと思うと…。」
よく見ると浩一さんは泣き腫らした顔をしていた。
「何を言って……。」
「友恵さんこそ何をやってるんですか。
電車に向かって飛び出そうとしたって。
僕を……僕を1人にしないで。」
消え入る声でつかむ手に涙が落ちる。
あの時、もういいやって思った。
何もよくないのに……。
私はこの人と離れたくない。
そしてこの人を置いてはいけない。
何より正気にさせてくれたのは浩一さんとの指輪だった。
あの時、顎に指輪が当たった痛みがなかったら朦朧とした意識で這ってでも線路に落ちたのかも………。
思い返すと背筋が凍る思いがした。
「すみません。
症状に気づいていたのに僕さえ理解していたら大丈夫だと………。」
「何がです?悪い病気ですか?」
顔を暗くさせた浩一さんに何かとても悪い病気なのかと緊張する。
「………更年期障害だそうです。
ここ何日、何ヶ月かイライラしていました。
人が変わったようでした。
でも病院に行ってと言えなかった僕にも責任が………すみません。本当にごめん。」
そんな…………。
思い返せば浩一さんに辛く当たっていたかもしれない。
疲れててイライラしてるとばかり思って。
八つ当たりするなんて浩一さんに甘えていた。
そういう甘えって一番ダメだ。
でもそれも全て更年期だったんだ。
前に一度間違えてるくせに本当の時は気づかないなんて笑えないわ。
「生理も来ている様子がなかった。
だけれど更年期のことを気にしていたみたいだったから言い出せなかったんです。
何より………僕は友恵さんに赤ちゃんを授けてあげられなかった。」
声を詰まらせる浩一さんはベッドに顔を埋めて嗚咽を漏らした。
泣きじゃくる子どものように「ごめん。ごめんね」と何度も繰り返して。
その背中を撫でる。
温かなぬくもりは確かにそこにあって、ものすごく切なくなった。
もう子どもを授かることはできない。
この人との子どもを………。
それは自分に重くのしかかった。
分かっていたことじゃない。
それなのにこんなにショックなんて……。
側には浩一さんがいた。
ベッドのすぐ側に腰を下ろして顔を覗き込んでいる。
「私………。」
夢でも見ていたのか。
それにしては腕が痛い。
その腕には注射をしたような痕があった。
「気が付きましたね。
僕は…………友恵さんが居なくなったらと思うと…。」
よく見ると浩一さんは泣き腫らした顔をしていた。
「何を言って……。」
「友恵さんこそ何をやってるんですか。
電車に向かって飛び出そうとしたって。
僕を……僕を1人にしないで。」
消え入る声でつかむ手に涙が落ちる。
あの時、もういいやって思った。
何もよくないのに……。
私はこの人と離れたくない。
そしてこの人を置いてはいけない。
何より正気にさせてくれたのは浩一さんとの指輪だった。
あの時、顎に指輪が当たった痛みがなかったら朦朧とした意識で這ってでも線路に落ちたのかも………。
思い返すと背筋が凍る思いがした。
「すみません。
症状に気づいていたのに僕さえ理解していたら大丈夫だと………。」
「何がです?悪い病気ですか?」
顔を暗くさせた浩一さんに何かとても悪い病気なのかと緊張する。
「………更年期障害だそうです。
ここ何日、何ヶ月かイライラしていました。
人が変わったようでした。
でも病院に行ってと言えなかった僕にも責任が………すみません。本当にごめん。」
そんな…………。
思い返せば浩一さんに辛く当たっていたかもしれない。
疲れててイライラしてるとばかり思って。
八つ当たりするなんて浩一さんに甘えていた。
そういう甘えって一番ダメだ。
でもそれも全て更年期だったんだ。
前に一度間違えてるくせに本当の時は気づかないなんて笑えないわ。
「生理も来ている様子がなかった。
だけれど更年期のことを気にしていたみたいだったから言い出せなかったんです。
何より………僕は友恵さんに赤ちゃんを授けてあげられなかった。」
声を詰まらせる浩一さんはベッドに顔を埋めて嗚咽を漏らした。
泣きじゃくる子どものように「ごめん。ごめんね」と何度も繰り返して。
その背中を撫でる。
温かなぬくもりは確かにそこにあって、ものすごく切なくなった。
もう子どもを授かることはできない。
この人との子どもを………。
それは自分に重くのしかかった。
分かっていたことじゃない。
それなのにこんなにショックなんて……。

