「子ども達と接しているところを見ていると友恵さんの年齢を知った時のことを思い出します。」

 何よ。おばさんとでも言いたいのかしら。
 今日は喜ばしい日のはずなのに。

「40歳で良かった。
 若くてお綺麗でしたので30代かもしれないと……。
 子ども達との方が僕より年が近かければ、さすがに友恵さんに断られるかと。」

 予想に反した台詞。
 いつも桜川さんは予想外で、それはいい方向に予想外だった。

 40歳で良かったなんて今までそんな風に思えたことはなかった。
 今はあの頃より歳を取った。
 40代で良かったとは思えないけど、40代でも悪くないかと思える。

 それは桜川さんのおかげ。


「桜川さんのお子さんすごくいい子達ですね。」

「友恵さんももう桜川さんでしょ?」

「そうなんだけど慣れなくて。」

 桜川さんは指輪をしている。
 思い返すと指輪をつけていない人だった。

 だからなんだと言うんだけど、少しだけ嬉しい私は意地が悪いのかな。

 妊娠はあれ以来、する気配はなかった。

「舞が無理を言ったかな?と心配でしたよ。
 僕の子ども達に「お母さん」と呼ばれるのに抵抗はないですか?」

 そんな心配を……。

「半分かもしれないけど、桜川さんの血が流れてると思うと大切に思えるんです。」

 穏やかな桜川さんは友恵の手に自分の手を重ねると微笑んだ。

「僕を一番大切にして下さいね。」

「もう。自分の子どもにも妬くんですか?」

「名前で呼んでくれたら機嫌を直します。」

 拗ねた顔をする桜川さんに笑えてしまう。
 口先まで尖らせる姿はいい大人とは思えなかった。

「はいはい。浩一さん。」

「やっと呼んでくれましたね。」

 ぶっきらぼうに言ったのに嬉しそうにする桜川さんには敵わない。

 愛おしい桜川さんに近づいてキスをする。
 それは穏やかで優しい時間だった。

 きっとこれからも桜川さんといる時間は穏やかで優しくてたまに情熱的なんだろう。