「いつ言い出せばいいのか分からなくて言うのが遅れてしまいました。
 その……僕が把握しているのもどうかと思うのですが、それだけ愛しいと解釈して下さいね。」

「何が?なんのこと?」

 言いにくそうに頭をかく桜川さんがぽつりと呟いた。

「………生理遅れていませんか?」

 忘れてた。
 仕事が忙しくて、時間があれば桜川さんに会って………バタバタしていた。

 そう言われれば前の生理の時期に来ていないのにそれからずいぶん経つ。

 嘘……。
 もうお互いに妊娠をするには高齢過ぎて、妊娠していたらなんて桜川さんの戯言だと………。

「友恵さんが大切です。
 だから……これを…………。」

 一旦、退かされて桜川さんは鞄を開けると鞄から出したものを手渡された。

 検査薬だった。

 桜川さんが買ったの?
 こんなの桜川さんがどういう顔で買ったの?

 驚いて桜川さんの顔を見ると、居心地が悪そうに目をそらされた。
 それがすごく愛おしくて抱きついて頬にキスをした。

「ありがとうございます。
 私では買いに行けなかったです。」

「えぇ。だから検査だけでもしてみてください。
 忙しくて遅れただけと笑い話になるならそれでいいので。」

 愛おしいそうに私の頬を触れる桜川さんの手が震えていた。
 桜川さんも動揺しているのだ。

 もし妊娠していたら51……いや、生まれる頃は52歳にしてパパだなんて、孫みたいな歳なのに。

 トイレに行くと自分も震えていたと気付かされた手で検査をした。
 結果が出るまでの待つ時間がこんなにも長いものなのかと吐きそうだった。


 控えめにノックされて「大丈夫ですか?倒れていませんか?」の声にハッとする。
 手の中の検査薬にはくっきりと陽性のところに線が出ていた。