その俯く頭にキスをされて「愛してます。友恵さん」の言葉が囁かれた。

 愛して……え?

 驚いて顔を上げるといつもと変わらない穏やかな桜川さんが微笑んでいた。

「私とは『愛』じゃなくて『恋』なのでは?」

 私にしてみたら当然の疑問をぶつけた。

『愛』は奥様なのだ。
 それを欲しいと駄々をこねるほど子どもではない。

「友恵さんは僕の全てです。
 だから恋でも愛でも全てで愛おしい。」

 ただの言葉尻を追いかけているだけ。
 分かっているのに気持ちは上向いて行く。

 何より軽蔑されるかもと怯えていた私には欲しい言葉を上回る言葉だった。

「怖いなら一緒に見てみましょう?
 感動しなかったからといって責めたりしません。
 友恵さんは僕を慈しんでくれてるのが一緒にいて伝わっています。
 人を愛せる人に悪い人はいないと思いますよ。」

 どこまでも私を受け入れてくれる桜川さんにはお手上げだ。
 何をしたって敵わない気がする。

「桜川さんは変わっています。
 眉間のしわに惹かれるくらいですものね。」

「はい。最近はおでこや眉間にキスをすると無駄な力が抜けて穏やかになるんです。
 その姿が可愛くて、それを毎日見られたらと思いますよ。」

 そこに繋がるんだから。

「一緒に住もうという話ですか?
 一緒に住むのは無理です。」

「無理ですか………。」

「住むのは、です。
 桜川さんの時間が許す時に泊まりに来てください。
 少しなら服とかの荷物を置いてもいいですよ。」