休みの日。羽を伸ばしてショッピングを楽しもうと歩いていると前方からランニングしている人とすれ違った。

 目深に被った帽子にジャージ姿。
 流れる汗はキラキラと輝いていた。

 偉いわ。私も何かスポーツ始めなくちゃ。
 感心しているとその人が少し先で止まって振り返った。

「友恵さん?」

 まさかの桜川さんだった。

 しまった。
 今日は月曜日だった。

 どうしてこう会っちゃうのかな。
 別に会いたくなかったわけじゃないけど。

「この後、予定が?」

「買い物に……。」

 当分は会えないって言っちゃったのに。
 予定が買い物だなんて。

 あれから電話がくるようになって電話で次の約束を聞かれた。
 火曜ならとだけ言って断っていたのに……気まずい。

 火曜は仕事でしてと言われるのを分かっていて、その返答にホッと息をついた。
 たまにある月曜休みのことは言わずにおいたのが事の顛末だ。

「買い物が終えたら会えませんか?」

「昼間からホテルに?」

「ちょっと待ってください。
 僕はそれだけですか?」

 そうじゃないけど、だっていつもそうなるからつい……。

 苦笑する桜川さんの額を汗が伝ってそれを見て欲情しているのは自分の方だった。

 自分の気持ちを認めた程度でそんな……。

 桜川さんの真っ直ぐな思いに自分が深入りしてしまったら身の破滅を招きそうで自制しているはずなのに。

 だから少し距離を置きたい。
 桜川さんには言えないけど。

「僕の家に来てください。
 明るい時間帯なら大丈夫でしょう?」

 だからそういうところが考えなしなのよ。
 女の噂話の怖さを分かってないんだから。

「とにかくまた連絡します。
 女の人の買い物って長いんですよ?」

 いけない。
 いつもみたいに桜川さんの熱に浮かされたら他のことがどうでもよくなってしまう。

 寝食も忘れ、何もかも放り出したくなる。

「帰らないといけない関係にここが疼くんです。
 一緒に暮らすこと考えてください。」

 桜川さんは胸に手を当てて悲痛な表情まで作ってみせた。

 ダメよ。これに流されちゃ。

「そっちの方が長続きするんじゃない?」

「終わる予定があるのですか?」

 拗ねた顔をした桜川さんに身の危険を感じる。

 手を引かれ抱きしめられたらお終いだ。
 分かっているのに引かれた手に抗えなかった。

「僅かな時間も一緒にいたい。
 離れたくないな。」

 頭にキスをされ「連絡待ってますね。今日中にはくださいね。」と解放された。