そんな私に佐々木さんが気が付いて
「修一郎クン。このままだとノエルちゃんが茹だってしまうよ」
と笑って注意してくれた。

は、恥ずかしすぎる。

みんなでソファーに落ち着き、修一郎さんから愛理さんをはじめご両親の井原社長と奥様もこの件を快く了承していると知らされた。

「親切にしていただいて私が言うのも変ですが、IHARAには何のメリットも無いどころかデメリットだらけの話だと思うんですけど」
と素直に疑問を口にした。

「メリットはありますよ」
佐々木さんが真面目な顔で話し出した。

「将来社長になる専務の縁談は今まで我が社の懸念材料でした。本人に現状結婚の意思がないのに進めるわけにもいかない。しかし次々と湧いて出てくる縁談話に手を焼いていましたから。でも、ノエルさんのご実家のANDOは国内最大手の飲料メーカーでノエルさんは結婚相手として他社に引けを取らないほどのお嬢様です。そのうえ、リゾート企業のうちがANDOと業務提携できることはメリットでしかないですからね」

「でも例えば、私が公に修一郎さんの婚約者として表舞台に立ってまたストーカーに悪質な嫌がらせをされてそれがマスコミとかにもれて世間からバッシングされる元になったとしたら・・・」

私は不安だった。「こちらにご迷惑をかけてしまいます」

「それはこちらできちんと対応しますから大丈夫ですよ。もし、そんな事があってもそれを逆に利用するって方法もありますからね」
「そうよ、ノエルちゃんは心配しなくて大丈夫」
佐々木さんと愛理さんは大丈夫と繰り返した。

「でも」って言っても
「大丈夫です。任せて下さい」
と佐々木さんが自信満々な笑顔で言ったから、私もしぶしぶ頷く事にした。