「あたし思ったんだ。あたしたちが今生きてる、この世界が夢で、あたしたちが夢だと思っているほうが現実だったりするんじゃないかな。って」


わたしはとなりでたまに変なことをいう友人の顔を見上げた。


彼女は、すずしくなって日が落ちるのが早くなっている夕陽をじっと眺めていた。



「ありえないけど、ないとは言い切れないよね」


そう呟いた横顔は少し寂しそうで、わたしも彼女と同じものを見た。


彼女は、ごくたまに変わったことを言い始める。


今回みたいなこういうのとか、なんでビッグバンは起こったんだろうとか、宇宙規模なことまでふと呟く。


でもわたしはそんな彼女の考え方がおもしろくて好きだった。



「だから、現実を見ないって、そういうことだったりするのかな」



彼女は変わったことをわたしに語って、しばらくだまった。


「なにかあったの」



わたしがそう口をひらいた。
でも彼女は、いつも通りの笑顔でわたしを見ると、首をふった。


「なぁんにも」


彼女のさらさらの髪が風でふわりと靡いた。


「…だから、ここは夢だっておもっちゃったら楽だよね」


わたしは軽くうなずいた。


「これからもっと楽になるね」


「そうだね」


彼女が私の手をゆっくり握った。


「一生覚めない現実世界へ戻ろう。」


わたしは大きく頷いた。
彼女のへんなことがこれで最後だと思うと少し寂しくなる。



でも、彼女のいう現実世界でもう一度彼女に会えたなら。




「いくよ?」

彼女の聞きなれた声に

「うん」

とわたしが返事をする。

「「せーの!」」



わたしたちは二度と覚めない現実世界への第一歩を二人で踏み出した。