「ちゃんと指輪、嵌めてるな」


「そうしないと、五十嵐さん、会社でなにするかわからないって言ったじゃないですか」

こんな高価な指輪、私には不釣り合いだって言っても聞き入れてもらえなかった。
そもそも寝てる間に勝手に嵌めるってどういうことか。
サイズ、ピッタリだったし。
しかも、挙げ句の果てには脅された。
解せない。


「虫除けだ。絶対外すなよ」


「虫除けって、意味がわかりません」


「とにかく外すな。結婚指輪は一緒に買いに行こう」

五十嵐さんは耳元でそう囁いて、手をヒラヒラさせながら持ち場に戻っていく。

婚約指輪の次は結婚指輪か。
五十嵐さんのことだから、式場やら新居やらその他のいろいろなことも、完璧に段取りしているのだろう。
全く隙がない。
五十嵐さんの思いのままにコトが進んでいっていて、なんだか悔しい。
けれども、週末のアレコレを思い出すと、これまでのように強く抗議は出来ない。

五十嵐さんに、身体に刻み込んでやる、とわけのわからない宣言をされて、強引にコトをされるのかと思いきや、まさかの優しい扱いに驚いてしまった。
何度も熱を注ぎ込まれて、その度に私の身体が大きく跳ねた。