従業員専用駐車場に足を踏み入れたとたん、体力の限界を感じて立ち止まり、膝に手を当て荒々しい呼吸が整うのを待つ。

こんなに全力で走ったの何年ぶり?

やだな……汗臭いかも。

ブルーのショルダーバッグから携帯用制汗剤を探していると、目の前に連なる営業車の右奥のライトが点灯した気がした。

その数秒後、シルバーの車が私の目の前に停まり、左ハンドルの運転席には先輩が座っていた。

そして親指で隣に乗るよう指示してくる。

先輩の助手席……

あの冬以来の助手席に胸が華やいでくる。

しかも左ハンドルなんて嬉しすぎ。

初カレ以来の左ハンドル……

なんてもう思い出したくもない。

よし! 先輩の隣でいらない記憶を是非とも素敵な思い出に上書き保存させて頂こう。