「私、おまわりさんに助けてもらえるよね………」

私は本来ここで死ぬことになっているが、警官に助けてもらえることを信じた。

ーーーーーーガチャリ。

そのとき、玄関の扉が開いた。

私は、玄関の扉の方に視線を移した。視線を移した先に、斎藤の姿が私の目に映った。

ーーーーーー来た。

その瞬間、ドクンと私の心臓が一回大きく跳ねた。

「好きだよ、千春ちゃん」

私を見て、彼の第一声がその言葉だった。

この彼の一方的な告白も、私は覚えがあった。

「お前が、斎藤だな!」

怒鳴り声を上げながら、連続して私のアパートの中に入って来たのは、数人の警官だった。

「なんでここに、警官が………」

それを見た斎藤は、驚いた顔を浮かべた。

「その女の子が、私たちに通報したんだ」

「えっ!」

男性警官の低い声を聞いて、斎藤は驚きの声を上げた。

「嘘だろ……千春ちゃん?」

斎藤が、緩慢な動作で私の方に視線を移した。

彼の瞳が水のように揺れ、哀しみの色が浮かんだ。

「ごめん」

小さな声でそれだけ言った私は、彼から逃げるように慌てて警官の側まで走った。

「僕のことを好きだと言ってくれたじゃないか?お客の中で、一番好きだと言ってくれたじゃないか?どうして、千春ちゃん!」

斎藤はこの現実が信じられないのか、大声で叫んだ。

「ごめん。仕事で言ってただけで、本当は嫌いなの」

「嘘だ………」

冷たく言った私の言葉を聞いて、斎藤はひざから崩れ落ちた。

「斎藤和樹。本名、和田哲也。お前を、殺人容疑で逮捕する」

そう言って男性警官は、斎藤の手首に手錠をかけた。