タイムリープ

「………もう終わりだ」

「えっ!」

斎藤はボソリと何かを言ったが、私ははっきりと聞こえなかった。

「こんな世界、もう終わりだ。千春ちゃんと一緒に幸せになれない世界なんて………」

斎藤は泣きながら、胸ポケットから折りたたみ式ナイフを取り出した。

私の瞳に映る、キラリと輝く鈍色の刃。

「えっ!」

私は、切れ長の目を限界まで見開いた。

ゾクゾクっと一瞬で私の背筋が凍り、恐怖で細い体が小刻みに震える。

「大好きな千春に、こんなことはしたくなかった。でも、仕方がないんだ。この世界で、千春ちゃんと僕が一緒になれないから…………」

そう言って斎藤はナイフの柄をぎゅっと握りしめたまま、私に一歩一歩迫る。泣きながら不気味な笑みを浮かべている斎藤の顔が、鈍色の刃に映る。

私は、それがとても恐怖に感じた。