タイムリープ

今までこんな優しくしてくれる人がいなかったせいか、そんなことを言われると例えお客様でもうれしく感じる。

ーーーーーーやっぱりこんな優しい人が、殺人者なんかじゃないよ。ネットの書き込みは、絶対に嘘だ。

そう思って私は、彼に視線を向けた。

「千春ちゃんは、好きな人がいるの？」

「えっ！」

突然、彼がプライベートな質問をして私は驚いた顔になった。

その瞬間、優太の姿が思い浮かんだ。

「いるんだね、その顔は」

優太のことを思い出して私の顔が赤くなったのを見て、斎藤さんが寂しげに言った。

「す、すいません………」

「いや、いいんだよ。僕も千春ちゃんのことが好きだけど、仕方ないことさ」

にっこりと微笑む、斎藤。

「それに電子掲示板で、僕は25年前の犯人と同一人物と書かれてるだろ。なんかそんな噂が世の中に広がると、僕は人を好きになることもダメな気がするんだ。ただ僕は、千春ちゃんのことが好きなだけなのに………」

そう言った斎藤の瞳が、涙で潤んでいた。

「私はネットの書き込みなんか信じていませんし、私のことが好きなのはうれしいです」

まっすぐな目で彼を見つめて、私そう言った。

「ありがとう、千春ちゃん」

私にそう言われたことがよほどうれしかったのか、斎藤さんは瞳に溜まった涙を手の甲で拭った。