「おつかれ、千春ちゃん」

「はい」

私は目の前にいる、店長にペコリと頭を下げた。

あれから二年の時が流れ、私は通っていた大学を無事卒業した。それと同時に働いていた風俗の仕事も、今日で辞めることになった。

「確か、今日が千春ちゃんの最後の出勤日だよね?」

「はい、今日が最後です。長いこと、お世話になりました」

私はもう一度、お世話になった店長に頭を下げた。

私が二十歳のころにインターネットで調べて、この風俗店で働くことになったのが二年前。あれから、もう二年の時が経つ。
最初はこの仕事ができるか不安だったけれど、スッタフや店長に優しく支えてもらってなんとかやっていけた。

「ほんとうに、いろいろお世話になりました」

「いや、いいんだよ。それより、ホームページに載せている、千春ちゃんの顔写真削除しとくからね」

「お、おねがいします」

私は、苦笑しながら言った。

店の名前で呼ばれていた、私の〝千春〟という名がこの瞬間消えたことによって、自由の身になれたのと同時にさびしさも込み上げた。